成人ぜん息患者医療費助成〜川崎市政の論点6〜

川崎市議会6月定例会議事録から「川崎市政の論点・争点・課題」を見出す試みである。
委員会では議案の審議、請願・陳情の審査をおこなう。
今回は条例改定と関連する請願の審議から、

平成21年6月18日 健康福祉委員会

◆議案第63号 成人ぜん息患者医療費助成条例改定 可決◆
「ぜん息に係る医療のうち、呼吸機能検査を新たに助成の範囲に加える」
◆請願第29号 継続審査◆
「成人ぜん息患者の医療費1割負担をなくす」


 <論点…ぜん息患者の検査範囲拡大、環境評価改善等の実質的な前進へ>


 状況説明
 気管支ぜんそくの医療費 全体の1割を除いた額を助成 H20/3/13継続審査
 利用者H21年5月末で3,620人 H21年度予算額 1億3,880万円
 呼吸機能検査…優先度の高い(早期治療、重積発作予防)
 東京大気汚染公害訴訟 H8/5/311次提訴 H19/8/8正式和解→「公害補償」
 ・東京都医療費助成制度創設 約100億円の基金 国、メーカー、道路公団
  川崎市との違い…事業財源は基金、患者負担無し


 質疑・討論
 主に石田和子議員が論点をスムースに変えながら質疑で「答」を引き出す。

 ◆石田和子(共産党);…この検査の費用は幾らになりますか。
 ◎環境保健課長;…7カ月分として100万円を予定しています。

 ◆石田;…画像検査を対象範囲にしない理由は何でしょうか。
 ◎保健医療部長;…画像診断が効果判定等に役に立つ有用性からするとかなり低い。
 ◆石田;…前回H20/3/13の委員会で、レントゲンについては東京の動向を見ながら検討すると答弁されていました。8月に東京の助成制度が始まって、画像検査が入っていれば、今後、川崎市も検討の余地があるということでしょうか。
 ◎環境保健課長;…東京では気管支ぜんそく治療のものはほとんど認められていますが、国やメーカーから100億円が出ており、川崎市は財政的に今後の課題とします。

 ◆石田;…ぜんそく患者さんの数は、高津区以北が非常に多くなってきています。ぜんそくの児童生徒は、国で全体の5.7%に当たる約73万人…川崎市では?
 ◎環境保健課長;…川崎市においては10.1%と伺っております。
 ◆石田;…私が区別に調べまして、やはりこの増加率が北部のほうに非常に多かった…ぜんそくにかかる児童も、成人も、川崎北部のほうが増加率は高くなっています。
 …環境省PM2.5の環境基準を設定することが報道…今後、観測体制を強化していくという御答弁…田島と池上で直近の測定結果を教えて下さい。
 ◎環境保健課長;…19年度、田島の測定局が20ug/m3、池上の測定局は21ug/m3で減少傾向だが…国で環境基準の設定と想定の米国基準値15ug/m3よりも上回っている…
 ◆石田;…田島、池上、高津と二子ということで、今度は多摩、宮前、そちらのほうにPM2.5の測定局をきちっと設けて、監視体制を強めていただきたいなと思います。
 ◎環境保健課長;…おっしゃったところを踏まえて今後は内陸部に増設する予定です。
 ◆石田;…全市的な検査ができるような体制をぜひ考えていっていただきたい。

 ◆石田;…国がそらプロジェクト事業…PM2.5健康被害を5年間で追跡調査する事業…国から委託されて川崎市も行っているその状況ですね。
 ◎環境保健課長;…自動車排出ガスによる大気汚染とぜん息などの呼吸器疾患との関連を調べる…予定では、平成21年度まで調査を行い、平成22年度に解析、まとめ…もしこれで何らかの結果が出た場合には市の対応を検討する必要があります。
 ◆石田;…さっきのレントゲン検査にちょっと戻りたいのですが、…これで肺がんなんかの病気の発見も可能なわけですから、PM2.5の自動車排出ガスと健康に与える影響の調査、解析がされた中でレントゲン検査についてもやっぱり必要になっていくのかなと…
 だから、先ほどの呼吸機能検査が7カ月分で100万円だと言われておりましたので、ぜひレントゲンも今後の検討の中に、PM2.5もあわせながらやっていただきたい。

 ◆石田;…東京と川崎の違いで、東京が大気汚染による被害者救済だ、川崎市はこの条例がアレルギー対策だということで、ネックになっているのかなと…国が東京都には拠出して、川崎市の要望にはこたえないという、その辺の理由をもう少し…。
 ◎健康福祉局長;…ぜんそく患者は全国的に非常に伸びてきている、…この制度自体が、公害補償ではなく、ぜんそく患者さんの健康回復を目指そうと、広く市内全域を対象…本市独自の市単の事業だと。…
 その制定当時、障害者の自立支援法、他の医療制度を見ますと、当然1割ですとか2割、こういった制度との均衡を踏まえて、患者さんに1割を自己負担していただこうという経過で制度が発足しました。現状、福祉医療関係でも非常に莫大な部分がございまして…。


 <コメント>
 条例改定案は「助成範囲に呼吸機能検査を加える」ことであり、更に検査を充実させる方向で議論している。対象範囲から外されたレントゲン検査について、
 石田和子議員(共産党)は『…前回H20/3/13委員会で、東京の動向を見ながら検討する…』との答弁から、環境保健課長『…財政的に今後の課題…』との回答を先ず引き出した。
 続いて、『…ぜんそく患者は高津区以北が非常に多くなっている…』ことを指摘、また、『…環境省PM2.5の環境基準設定…』に関して川崎市の測定状況を質問、今後は『内陸部に増設する予定』であること確認した。
 更に『国のそらプロジェクト…健康被害の追跡調査…』から議論を『…ちょっとレントゲン検査に戻して…』その必要性に言及した。
 ぜん息に係る「医療」の理解、「政策」の調査、それをレントゲン検査に結びつける「質疑」のアプローチは見事!本定例議会の質疑・質問のなかでも“白眉”である。


 一方、請願は「医療費1割負担をなくす」ことで、健康福祉局長『…こういった制度との均衡を踏まえて…現状、福祉医療関係でも非常に莫大な部分がございまして…』。福祉医療のなかでの優先順位を議会で議論できるのか、問われる。