山田太一、川崎は汚れと人間の匂いでいく…/市民ミュージアムHP

 新館長を迎え、新機軸を打ち出している川崎市民ミュージアム
http://www.kawasaki-museum.jp/

 等々力緑地の一角にあって、古くからの釣り堀、池、自由広場などと、今やフロンターレのホームとして全国に知られるようになった陸上競技場をはじめとしたスポーツ施設とが共存するその中に、何故かぽつんとある文化施設である。

 私自身は好きな場所である、地域少年サッカークラブのコーチを始めてから足が遠のかざるを得なくなっているが。でも、何故好きかか?と尋ねられれば、人が少なくてゆっくりと出来るからと答えるだろう。

 建設コスト約140億円、年間運営コスト6.8億円に対し、その「人が少ないこと」(入場料収入が2.5%)が問題となって、改善委員会が設置され、そのあり方についての健康結果も報告されている。これについては以下を参照。
 http://www.city.kawasaki.jp/88/88bunka/home/top/kaizen.htm
 
 その市民ミュージアムの新機軸の一環であろうが、HPに「特集」があり、「シリーズ新館長への提言」と銘打って第1回・山田太一(脚本家)とあった。
 「男たちの旅路」をみてファンになり、以降ドラマを楽しんでみていることもあり、色々な処での発言も注目していたし、川崎市在住であることも知っていた。
 
 氏が川崎市に対してどのようなイメージを持っているのか非常に興味があり、早速、読んでみた。筆者自身のコメントとしては、川崎に限らず、都会の街とはベッドタウンではなく、生活の街、そのものである。山田太一の発言は、生活者が日頃感じながら、しかし、言葉として表現しにくい感情をズバリと宛てている。そこに山田太一の作品が深く心を打つ理由がある。かつて、職場が川崎市であり、自宅が大田区にあった頃、帰りのバスで多摩川を越える東京側へ入ると何かホッとした気分になったことを覚えている。今、職場が浜松町の辺りで、帰路の目黒線多摩川を越えて川崎市に入るとがホッとした気分になるのも同じであろう。生活の街は内向きの街であり、ドメスティックな世界なのだ。だから、汚れと人間の匂いがなくてはならないのだ。


 以下は筆者の印象に残った発言をHPより転載している。 

 …「川崎は内向きの街。外から来た人にはそのおもしろさが分からない」と。だから、住んでみないとよさが分からない。…人間は、自分が持っている内部の汚れに見合う街で、ホッとできるところがあると思います。全部きれいではやりきれない人もいると思うんですよ。そういう意味で、よその街がきれいになればなるほど、川崎は“汚れ”を維持していてほしいですよね。武蔵小杉駅の周辺がやたらきれいになりそうで、ちょっと心配ですけど(笑)。

 …ずいぶんときれいになった街もありますが、いまでも雑然としたところがある。…だから、開発してコンサートホールとかができちゃうと、そういう人たちはそこでホッとできなくなってしまいますよね。…ちょっと路地を入ると、まだ、誰とも会いたくないときに行けるような店が残っていますからね。…そういう面を、川崎がどーんと引き受けてあげるとい
うね(笑)。…

 …意識的に多摩川を渡ることを道行き風に使いましたね。川を渡ると、そこにドメスティックな世界がある、というような。…
街や生活が近代化され、食べていくといった基本的な生存の恐怖がなくなったときに、みんなパワーが落ちていきますね。…ドラマについても同じことがいえ、親子げんかひとつ取っても、立ち入ってみればそれぞれがじつに違う。…そういう違いを見極めるための視力を強めることに深く使命を感じる人に、その違いをくっきりと際立たせて見せてくれる作品を作ってもらったりして、…。


「吉井 俊夫のHP・散歩から探検へ」:川崎市政関連の論考を掲載。
 http://www.h7.dion.ne.jp/~as-uw/
姉妹編ブログ「備忘録」:07/02/9以前の川崎市政関連の論考はここに掲載。
 http://blogs.dion.ne.jp/ty9advs/