関西の道州制〜関西EU説・上山信一教授のブログ〜

 道州制についての議論が盛んになっている。ここでは行政改革を引っ張っている慶応大・上山信一教授の説を紹介する。
 http://www.actiblog.com/ueyama/

 題して、「わたしの関西EU説&関西道の作り方」(07/02/20)である。以下、要点を転載。
 
1)関西EU説
道州制を最も必要とする地域は関西だ。
大阪・京都連合を基軸に関西の府県・政令市の権限を吸い上げ、道州政府を作ればよい。
そのモデルはEU統合、大阪はドイツ、京都はフランス、神戸はイギリス。…
 関西にもEU統合と同じような条件が生まれつつある。
EU統合のきっかけは仏独首脳の歴史的融和、そして東西ドイツの統一だった。
大阪府大阪市の連携も始まる(冷戦終焉)。
次の課題は大阪・京都の「二府融和」、これは独仏融和に相当する。
 
2) 関西道の作り方
 地域側からの独立運動として関西道を組織化すべき、道州制の導入を国任せにしない。
(1)関西の各地域は、単独ではもちろん個々に国に依存していてはやってはいけない
 (現実直視)
(2)国に対して各県が個々に陳情するという卑屈な姿勢を捨て域内で相互連携
 (地域に根ざした“人民解放戦線”の構築!)
(3)その上で国に対して権限委譲を迫るべきである。
 (地域独立運動!)

 前半の「わたしの関西EU説」、後半の「関西道の作り方」と分かれる。

 「わたしの関西EU説」は、アナロジーとして親しみやすい。ただ、歴史的アナロジーもおおまかには良いが、鋭い認識と洞察がないと、単に似ているという思いつきだけで終わってしまいそうである。どこも似たり寄ったりで、適当な国になぞらえることはいくらでも出来るからである。

 独仏の石炭鉄鋼共同体を作る発想から始まったEUは、ヨーロッパ大陸を破滅に追いやる戦争を回避し、“平和の構造”を構築することを狙ったものであった。
 独仏の石炭鉄鋼共同体を作る発想から始まったEUについては後日論じたいが、ここでは大阪・京都の「二府融和」に擬えるのはまったく中身が異なる。サッカーコーチに例えるならば、EUはS級ライセンスであり、関西EUはせいぜいB級ライセンスくらいであろう。しかしケチな争いをしている「二府」がEUの本質を理解するのは難しいだろうから、逆に、この発想に飛びつくかもしれない。何がどう転ぶかわからないのが政治の世界である。方向性は誰がみても間違いないのだからきっかけを作ることは大切である。

 「関西道の作り方」として“地域からの独立運動”も重要な指摘であるが、国に依存できないという現実を直視することは、関西に限らず共通認識であるはずだ。特に関西だけの特徴とも思えない。一方、少し筆が滑っているなと思われるのが、地域に根ざした“人民解放戦線”!地域独立運動!を標榜していることである。統合なくして独立はあり得ない。おらが町と言い出せば、地域はどんどん分割されていく。解放とは何であり、地域とは何であり、独立と統合の矛盾を自らの内側から乗り越えていかなければ、困難な闘いに勝ちはない。

「吉井 俊夫のHP・散歩から探検へ」に川崎市政関連の論考を掲載。
 http://www.h7.dion.ne.jp/~as-uw/
07/02/9以前の川崎市地方自治関連は、ブログ「備忘録」に掲載。
 http://blogs.dion.ne.jp/ty9advs/