地下鉄建設問題〜川崎マニュフェスト2007〜

 昨日の本ブログで民主党川崎市議団が「川崎マニフェスト2007」を発表(07/01/18)したことについて述べ、県内初の地域限定の政策綱領になることに意義について議論した。
 
 結論として「“議員あって議会なし”の地方自治体議会」を改革する方向は、以下であった。
 必要条件
 地方自治体としての具体的な統一的政策を打ち出し、住民に約束し、その評価も受ける「マニフェスト」を有する会派の存在
 十分条件
 調査権を駆使して活動し、政策を立案し、行政側に実行させるように議会を動かしていくこと
 追加条件
 住民の参加と自治体との協働を仕掛けていくこと

 「川崎マニフェスト2007」は、川崎市新総合計画「川崎再生フロンティアプラン」をたたき台にして洗い直し、行財政改革と議会改革の2分野も含めた9分野102項目にまとめ、さらにその中から10の重点施策を決定している。
 
 10項目の重点施策の中で注目したいのは、以下の2項であり、互いに深く関連する内容である。
住民投票による市民合意に基づいて市営地下鉄の建設に取り組む」、
「市内の交通不便地域56カ所にミニバスなどのコミュニティー交通を積極的に導入する」。

 これを合わせて読めば、市営地下鉄の建設に疑問を投げていることは一市民として容易に理解できる。第1期分だけでも4,246億円もの多額な投資が必要であり、おそらく、他のインフラ整備をほとんど後回しにするという不均衡なことを行わなければ、実施できないことである。

1)先ず、住民投票を掲げていることである。
 住民投票制度は自治基本条例31条に規定されており、あとは条例を議会で採択する手続がのこされているのみである。自治運営の原則である情報共有、参加、協働のなかの重要な役割を果たすものである。議会、市長の発議に基づいて実施されるから、将に市議会議員としてのマニフェストの最上位にランクされる。

2)川崎市にとって長年の問題になっている事項である。
 この建設問題について先年、市民の一部を対象に意見を聞き、多数の意見に従って、延期した経緯がある。その後、ルート変更により阿部市長は再度建設することを決め、また、何を血迷ったのか住民投票しないと言明している。まったくおかしな話である。

3)阿部市長に対するイエスマン議会から脱皮する第一歩である。
 川崎市新総合計画の枠内だけであれば、早い話、マニフェストの意味も半減する。ここでは、新たな提案を行い、猫の首に鈴を付けるネズミの役割が必要である。

 また、川崎市は北部に丘陵部が多く、その発展の事情から「市内の交通不便地域56カ所」が定義されている。おそらく、更に細かく調べれば、交通不便地域はもっと増えるに違いない。横浜市の例にもあるように、コミュニティー交通の考え方を構築することは、避けて通れない問題である。

 鉄道の問題は川崎市を縦貫する地下鉄の建設よりも、殺人的ラッシュになっている田園都市線小田急線の問題、南部線の増強等、単に川崎市だけの問題ではなく、首都圏全体の交通体系という基本問題の中で考えるべきことである。その中で、川崎市としては、行き届かないローカルの交通不便地域問題を公共問題として担っていく方向が必要ではないか。

 この「市内の交通不便地域」問題は、今でも普請が加速されるかのような首都圏における(いびつな)発展の吹き出物である。にきびをつぶすように、単に、利用者に負担を求めれば良いという次元の問題ではない。


「吉井 俊夫のHP・散歩から探検へ」に川崎市政関連の論考を掲載。
 http://www.h7.dion.ne.jp/~as-uw/
07/02/9以前の川崎市地方自治関連は、ブログ「備忘録」に掲載。
 http://blogs.dion.ne.jp/ty9advs/