川崎マニュフェスト2007の意義〜民主党川崎市議団の先駆的試み〜

 民主党川崎市議団が「川崎マニフェスト2007」を発表(07/01/18)したことについて既にブログで報告した。http://blogs.dion.ne.jp/ty9advs/archives/4940462.html

 その特徴は、県内初の地域限定の政策綱領になること、である。
 川崎市新総合計画「川崎再生フロンティアプラン」をたたき台にして洗い直し、行財政改革と議会改革の2分野も含めた9分野102項目にまとめ、さらにその中から10の重点施策を決定している。

10項目の重点施策の中で注目したいのは、以下の2項であり、互いに深く関連する内容である。
「市内の交通不便地域56カ所にミニバスなどのコミュニティー交通を積極的に導入する」
住民投票による市民合意に基づいて市営地下鉄の建設に取り組む」

 上記の重点施策については明日にでも議論しよう。ここでは、もとに戻り、県内初の「地域限定の政策綱領」の意義である。

 07/02/16付け本ブログにおいて、「“議員あって議会なし”の地方自治体議会」を議論した。
 川崎市は7区からそれぞれ7〜10名の議員が選出される大選挙区である。5千票が当選ラインとも言われている。町会、労組等の中間団体の権益を代表する議員が多い。従って、会派といっても政策でリンクされているものはなく、個人経営の商店主の集まりのようなものである。

 当然、川崎市としての政策は、予算編成、法規立案を含めて、すべて阿部市長と行政機構によって独占されている。議会にできることは議案に賛成することだけである。その逆は人事案件を中心にして拒否権を行使することである。そこで議員に出来ることは、たかだか、議会において単発的な質問をすることと、支持母体からの権益依頼に“口利き”をすること程度になってくる。

 マックス・ウェーバー第一次世界大戦後にドイツについて警告を発したように、「議会が、財政的手段の拒絶や法案に対する同意の拒絶によって、あるいは権威のない道議の提出によって、ただ住民の不満を行政官庁に向かって強調することしかできないならば、その議会は政治的指導への積極的参与ということから閉め出された議会という他はない。」(「新秩序ドイツの議会と政府」河出書房新社版)のである。

 それを打ち破るには、地方自治体としての具体的な統一的政策を打ち出し、住民に約束し、その評価も受ける「マニフェスト」を有する会派の存在が必須の必要条件である。また、調査権を駆使して活動し、政策を立案し、行政側に実行させるように議会を動かしていくことが必須の十分条件である。更に、住民の参加と自治体との協働を仕掛けていくことも新たな任務として重要となることも論を待たない。

 その先駆けとなる「川崎マニフェスト2007」は、今後の地方自治の方向性を定めていくキーポイントの一つとして位置づけられ、注目されるべきである。


「吉井 俊夫のHP・散歩から探検へ」に川崎市政関連の論考を掲載。
 http://www.h7.dion.ne.jp/~as-uw/
07/02/9以前の川崎市地方自治関連は、ブログ「備忘録」に掲載。
 http://blogs.dion.ne.jp/ty9advs/