社会保障と税の一体改革素案

社会保障と税の一体改革素案
http://jp.reuters.com/article/JPshiten/idJPTYE80502I20120106?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0

[東京 6日 ロイター] 政府・与党は6日、「社会保障改革本部」を開き、社会保障と税の一体改革の素案を決定した。
消費税率の引き上げについては「2014年4月に8%、2015年10月に10%」とすることを明記。景気情勢によって消費税引き上げの執行を停止する条項として「種々の経済指標を確認し、経済状況などを総合的に勘案する」との文言を盛り込んだ。

政府・与党が決定した社会保障と税の一体改革素案の主な骨子は以下のとおり。

<改革の必要性>

社会保障制度は、現在でも全体として給付に見合う負担を確保できておらず、その機能を維持し制度の持続可能性を確保するための改革が求められている。給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心という現在の社会保障制度を見直し、給付・負担両面で、人口構成の変化に対応した世代間・世代内の公平が確保された制度へと改革していくことが必要。

・わが国財政は、税収が歳出の半分すら賄えず、国及び地方の長期債務残高は2012年度末には対GDP比195%に達すると見込まれる極めて厳しい状況にある。毎年1兆円規模の社会保障の自然増が不可避となっており、今を生きる世代が享受する社会保障給付について、給付に見合った負担を確保しないままその負担を将来世代に先送りし続けることは、社会保障の持続可能性確保の観点からも、財政健全化の観点からも困難。

・今回の改革で盛り込まれている社会保障の充実策は、年金国庫負担2分の1の恒久化を含め、消費税率の引き上げによる安定財源の確保が前提であり、社会保障の機能強化や安定化を図るためにも、それに見合う安定財源を着実に確保していく必要がある。

社会保障改革>

[基本的考え方]

・今日の日本の社会および社会保障制度は人口構成の大きな変化、雇用基盤の変化、家族形態・地域基盤の変化、貧困・格差問題、世代間の不公平などの問題に直面。年金・医療・子育てなどの社会保障制度の持続可能性の確保と機能強化が求められている。

・高齢化が一層進んだ社会においても、わが国が世界に誇る国民皆保険・皆年金を堅持した上で、より受益感覚が得られ、納得感のある社会保障を実現する。

[子ども・子育て新システム]

・子どもと子育て家庭を応援する社会の実現に向け、地域の実情に応じた保育等の量的拡充、幼保一体化などの機能強化を行う子ども・子育て新システムを創設。12年度に法案を提出する。

[医療・介護等]

・あるべき医療提供体制の実現に向け、診療報酬および介護報酬改定、都道府県が策定する新たな医療計画に基づく地域の医療提供体制の確保、補助金等の予算措置を行うとともに医療法等関連法を順次改正する。12年通常国会以降速やかな法案提出に向け、検討する。

・長期高額医療費については、年間での負担上限等を設ける。

・高齢者医療制度廃止に向けた見直しのための法案を12年通常国会に提出。

[年金]

・所得比例年金と最低保障年金の組み合わせからなる一つの公的年金制度にすべての人が加入する新しい年金制度の創設について国民的な合意に向けた議論や環境整備を進め、引き続き実現に取り組む。13年の国会に法案を提出する。

・基礎年金国庫負担2分の1を恒久化。12年度の国庫負担割合は歳出予算と「年金交付国債」により2分の1を確保することとし、必要な法案を12年通常国会に提出。

・最低保障機能を強化。低所得者への加算や障害基礎年金等への加算、受給資格期間の25年から10年への短縮は消費税引き上げ年度から実施する。

・物価スライド特例は12年度から14年度までの3年間で解消。12年度は10月から実施する。

<税制抜本改革>

[基本的考え方]
・国分の消費税収は法律上、全額社会保障目的税化するなど、消費税収の使途を明確にし、官の肥大化には使わず、全て国民に還元し、社会保障財源化する。

・経済状況を好転させることを条件として遅滞なく消費税を含む税制抜本改革を実施することが必要。

・2013年度以降においては、復興需要が一段落するものの、民需主導の経済成長への移行によって経済が堅調に推移すると考えられる。ただし、海外経済動向などから景気が下振れするリスクが存在することには、十分注意する必要がある。法案提出時点における総合的な判断として、経済状況は好転していくとの見通しが立てられ、素案に沿って法案を今年度中に提出する。

・法律成立後、引き上げにあたっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応できるような仕組みを設ける。具体的には、名目・実質成長率、物価動向など、種々の経済指標を確認し、経済状況等を総合的に勘案したうえで、引き上げの停止を含め所要の措置を講じるものとする規定を法案に盛り込む。

・今回の改革に引き続き、少子高齢化の状況、財政の状況、経済の状況などを踏まえつつ、次の改革を実施することとし、今後5年を目途に所要の法制上の措置を講じることを改革法案の付則に明記する。

[政治改革・行政改革への取り組み]

議員定数削減や公務員総人件費削減など自ら身を切る改革を実施したうえで、税制抜本改革による消費税引き上げを実施すべきである。

・具体的には、消費税率引き上げまでに、国民の納得と信頼を得るために、衆議院議員定数を80削減する法案を早期に国会に提出し、成立を図る。民主党行政改革調査会で「行政構造改革実行法案(仮称)」の検討を進めていることを受け、国民新党と連携しつつ、所要の法案を早期に国会に提出し成立を図る。給与臨時特例法案、国家公務員制度関連法案の早期成立を図る。 続く...

[消費課税]

・消費税率(国・地方)は2014年4月1日より8%へ、2015年10月1日より10%へ段階的に引き上げを行う。

・今回の改革においては、単一税率を維持する。

・消費税収(国分)は法律上は全額社会保障4経費(年金・医療・介護の社会保障給付と少子化に対処するための施策に要する費用)に充てることを明確にし、社会保障目的税化する。

・15年度以降の番号制度の本格稼働・定着後の実施を念頭に、関連する社会保障制度の見直しや所得控除の抜本的な整理と合わせ、総合合算制度や給付付き税額控除等、再分配に関する総合的な施策を導入する。再分配に関する総合的な施策の実現までの間、暫定的・臨時的措置として、簡素な給付措置を実施する。

・住宅取得については、消費税率の引き上げの前後における駆け込み需要とその反動等による影響が大きいことなどを踏まえ、住宅取得にかかる必要な措置について財源も含め総合的に検討する。

[個人所得課税]

所得税については、高い所得階層に負担を求めるなど、所得再分配機能の回復を図る改革を進める必要がある。課税所得5000万円超について45%の税率を設ける。

[法人課税]

・復興特別法人税課税期間終了後(2015年度以降)には、実効税率の引き下げが実現するが、その後も引き続き、雇用と国内投資拡大の観点から、新成長戦略も踏まえ、法人課税のあり方について検討する。

[その他]

・金融所得課税は14年1月に20%の本則税率とする。