「オープン」ななかでのオープンな議論〜多摩市議会改革特別委員会傍聴記〜

 多摩市議会「議会基本条例制定をめざす議会改革特別委員会」(以降、「議会改革特別委員会」)の審議を12/17に傍聴しました。

 午前10時から午後3時まで、昼食休憩を挟んで長時間にわたる充実した審議を展開された委員の方々には感謝します。推進役の藤原議長も熱心に聞いておられ、8月の「条例作り会議」では周りの方との話の間に挨拶しただけでしたが、今回は終了後お話できました。
 また、多摩市議会ウォッチングの会の方にはご案内を頂きお世話になりました。ありがとうございます。

 先ず、川崎市の一市民が「多摩市議会改革特別委員会」の審議を傍聴したいきさつを改めて述べておく。筆者は「川崎市議会議員と語る会」高津区実行委員のひとりで、“議会に関心をもつ住民”と“住民に開かれた議会”との相互作用による自治体の活性化が将来にわたっての自治体の営存を約束すると考えている。

 さて、川崎市議会での「議会基本条例」の審議は、非公式機関である会派団長会議の諮問機関「議会のあり方検討プロジェクト」において今年の6月から検討されている。
 しかし、その第1回会議で「傍聴及び報道機関の取材はご遠慮願う」と決められ、また、会議日誌の公開請求に対し、討論内容は「まとめ」についてまでも“墨塗り”にした形式的な部分開示だけであった。
 全く「非公開のクローズ」されたなか中での議論となっている。この方法は全く理解できない。議会のあり方の一つとして“開かれた議会”が全国的にも目指され、多くの自治体が特別委員会を設置し、公開されたなかで「議会基本条例」の検討を行っている。川崎市議会も直ぐに公開すべきと考える。

 一方、多摩市議会は平成19年9月に議会で「議会改革特別委員会」設置を議決し、その後、審議を重ねると共に「出前委員会」の開催、「住民アンケート」の実施とその分析等、議論の過程を住民にオープンにして「議会改革」案を策定する方法をとっている。
 その基本的な姿勢を次のように述べている。
1)「議会基本条例」は改革のゴールではなく、むしろスタートライン
2)制定プロセスで、議会・議員だけの議論にはしないため、多くの市民の意見をいただきながら、改革を進めることをコンセプトにしている

 「議会改革」の議論が実際にどのように行われているのか、川崎市では皆目検討もつかない状態から少しでも実態を知るためには近くの自治体議会での議員間の討論を傍聴し、川崎市議会の状況を推測する以外に手はない。実際の議論を聞いたという意味で今回の多摩市議会の傍聴は「百聞は一見に如かず」を地でいくようなインパクトを与えてくれた。

 多摩市の人口は約17万人、市議会議員は26名、「議会改革特別委員会」のメンバーは13名でその半数である。なにしろ6会派で5名、4名、3名が仲良く2つずつ、あとはひとり会派が2つであるから細分化されていて面白い。13名は6会派各2名と2のなかのひとつ。また、女性7名と過半数川崎市議会「議会のあり方検討プロジェクト」のメンバー13名はすべて男性。多摩市議会は撮影、録音等は委員長の許可で可能(拒否されることは先ずない)、傍聴席で資料を閲覧できる。このあたりも川崎市議会よりは改革が進んでいる。

 さて、本日の主要議題は「改革骨子案」を委員会としての「改革骨子」にするため、最後のツメの審議であった。この「改革骨子」を議員全員へ説明し、その後、中間報告として公表することになっている。そして1月には第2回目の「出前委員会」を3箇所で開催し、2月には公聴会を開催する予定になっている。従って、市民にとっては素案に等しいまとまった案になる。

 参考に供せられた配布資料によれば、
 「改革骨子案」として先ず、二元代表制の実質化、機能強化、討論する場づくり、市民参加の場づくり、を謳っている。
 続いて[原則]として
1.行政へのチェック機能強化
2.議会による政策提案機能を充実
3.討論による合意形成
4.市民によく見える、市民が参加する議会

 更に各論として個別事項が挙げられ、今日はその文案を審議してフィックスするらしい。「3.討論による合意形成」に対応する審議にあたるので興味津々であった。それぞれの各論の様子とコメントは別途メルマガで報告することにし、ここでは簡単に感想を述べる。

 議論は安藤委員長の采配のもと、おこなわれた。お互い異なる意見をすり合わせてきたことを骨子の各論として短い文にするのはなかなか難しい。しかし、条例を作るという大きな目的があるためか、言いたいことを言いながらも妥協の文案を提示したり、説得を試みたり、様々である。ときたま、或る委員の発言が余韻を引いて隣同士の議員が話をはじめ、委員長が「ご静粛に」と注意する場面がある。また、元に戻るような議論があると、委員長がこれまでの経緯を簡単に振り返り、文案に込められた考え方を確認する場面もしばしばあった。

 最初の4,5項目で1時間以上の時間を使っていたため、これは夕方5時までかかるだろうな、と考えていたが、だんだんと合意のスピードが上がってきた。チョット疲れたか?確か、ケネディ・ジョンソン時代の高官だったと思うが、自ら参加する最高決定会議を評して「疲労困憊による合意」と述べた、と言われていることを思い出した。
 結局、3時過ぎに終わった。合意形成段階の会議であり、文言を一つ決めるのも難しい処があったが、さすがプロとしての仕事、見事に収束していった。

 議会提案の議案は議員間の討論がみられるのであるから、本会議での無味乾燥な台本ベースの質問と答弁よりは学べることも極めて多く、論議の面白さもある。議会に関心のある市民にとって必見といって過言ではないと、改めて考えた。今後は市民の発言も多くなるであろう。どんな異論がでてくるのか、楽しみである。出前委員会も是非参加したい。

多摩市 http://www.city.tama.lg.jp/index.html

なお、更に詳しい報告は、
「メルマガ」 探検!地方自治体へ〜川崎市を中心に〜
 第74号『多摩市議会・議会改革特別委員会傍聴記』08/12/23予定
http://archive.mag2.com/0000219072/index.html