再説 短書評「まちづくりと新しい市民参加」

ドイツで始められた「プレーヌンクスツェレ」(英訳・Panning Cells、邦訳・計画細胞)を紹介している。日本においても自治基本条例が自治体で採択されるようになり、その中でもて謳われているように、「情報開示、住民参加、住民と自治体との協働」が、今後の地方自治のキーワードと言われている。
(このような問題意識を有して構成されたHPとして、
  http://homepage3.nifty.com/npm/hyouka/ を参照、このHPから今回の本を知った)


しかし、この理念を具現化する方法として提案されているのは、住民投票パブリックコメント公聴会等であり、新しい概念としての“参加と協働”を象徴するには貧しい内容である。「プレーヌンクスツェレ」は無作為に抽出された市民による課題の討議会であり、詳細な情報開示のもと、課題について手厚い説明がなされ、少人数のグループで生活知を出し合って討議し、衆知を集めて提案をまとめることを目的としている。ドイツにおいては中立機関が討議会の運営を行い、プログラムも決定する。例えば4日間にわたって住民は有償で参加する。また、日本での先駆例として三鷹市の取り組みが紹介されている。先般話題となった我が国の「やらせ公聴会」とは全く異なるものである。



本のなかで「“討議する公衆”の登場」という言葉があった。これこそが、「住民参加、住民と自治体との協働」における新たな住民モデルの一例のように感じる。


18世紀にヨーロッパで完成をみた公衆秩序は、19世紀以降、反ユダヤ主義帝国主義を経て融解し、根無し草の大衆にその基底をおく全体主義の台頭を招き、戦争と革命の時代に突入した(ハンナ・アーレント全体主義の起原』(みすず書房))。


第二次大戦後の石炭鉄鋼共同体から拡大EUへの展開、
福祉国家建設、
アメリカ的市場原理主義とは異なる公共性を含んだ経済思想、
女性の意識変化に対応した社会制度改革、
地球規模の環境問題意識等、
これらのことを政治的にみれば、ヨーロッパ的規模、大衆規模で新しい“公衆秩序”を再生しようとするヨーロッパ思想の試みとして評価できないであろうか。
「プレーヌンクスツェレ」については、このようなバックグラウンドを広く理解しながら自らの自治体へ、積極的に、しかし、慎重に取り込みを図っていくべき深い課題である。


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