オペラ座の弁慶・富樫

 昨晩、BS3でオペラ座歌舞伎公演を見た。勧進帳は弁慶で代表されるが、弁慶・富樫の対決があって初めてドラマになる。

 市川染五郎の弁慶、片岡孝夫の富樫を随分前に国立劇場でみた。このときも次のように感じた。弁慶が知恵と駆け引きで関所の通過を狙うという目的に向かって明快に演じることが出来るのに対して、富樫は単に山伏の関所通過を防ぐということだけではない。本物であれば通しても良いのだから真偽を判断するという曖昧さを含んだ立場である。状況の変化に即した心理の変わり具合を表現しなければならない。最後は弁慶の忠誠心と戦術のすべてを知った上で、関所の通過を許す。これが、共感なのか、同情なのか、或いは…なのか、その表現から読み取ることは非常に困難であった。

 今回も富樫の表現からその気持ちを受け取ることが出来るか、と見ていたが、やはり曖昧なままであった。
 
 しかし、弁慶の明快さと富樫の晦渋ぶりがセットになっており、それでも両者に決断の場面があることが、音楽性、芝居性も含めて、何度みてもあきさせないところなのであろう。


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