論文評『欧州はどこへいくのかー欧州統合構想と新たな欧州像の模索』

 昨日に続き、田中友義駿河台大学教授の論考で、季刊『国際貿易と投資』Autumn 2003/No.53, P75 に掲載された。昨日の論考の続きであり、2000年代に入って輩出した百花績乱の欧州統合構想をまとめている。以下である。

(1)フィッシャーの「欧州連邦」構想、起爆剤
(2)シラクの「パイオニア・グループ」構想、国民国家の解体を望まず
(3)ブレアの「スーパーパワー欧州」構想、超国家には反対
(4)シュレーダーの「統合の最終形態」構想、フィッシャー以上に連邦的
(5)ジョスパンの「国民国家の連邦」構想、国家解体のない欧州建設

 論争の焦点は、やはり「連邦」か「連合」か、別の言葉では超国家か、国民国家維持かである。「連邦」を牽引するのはドイツ(フィッシャー、シュレーダー)であって、それ反対するイギリス(ブレア)、国家解体のない「国民国家の連邦」を主張するフランス(シラク、ジョスパン)である。

 ここで問題は、「デンマーク、フランス両国の国民投票の厳しい結果は、「民主主義の赤字」と批判されているエリートたちの欧州統合に対する市民(草の根)レベルの異議申立てであった。」と言うことである。即ち、重層的構造から成っている統合欧州のそれぞれのレベルのアイデンティティを確立していくこと、そのルール化である。これが「補完性原理」という表現である。EUが次の段階に入ったことを明らかにしている。


「吉井 俊夫のHP・散歩から探検へ」:川崎市政関連の論考を掲載。
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